アプリ案内

その旅に、物語を。

Pokkeインタビュー #004

【出雲観光協会にインタビュー】出雲のストーリーを伝えながら、自然や文化を後世に残していく

出雲大社をはじめ、数多くの観光名所を有する日本屈指の観光地・島根県出雲エリア。豊かな自然が残る「大山隠岐国立公園」や古くから伝わる「出雲神話」、日本遺産「日が沈む聖地出雲」など、この地が誇るさまざまな魅力を、一つのストーリーとして伝え、楽しんでもらおうと活動するのは、一般社団法人出雲観光協会の皆さん。

Pokkeインタビューでは、出雲観光協会で日御碕・鷺浦エリアを担当する、足立彩子(あだち・さいこ)氏に、この地の魅力について、自然や歴史、文化といった角度からお話していただきました。

ゲストプロフィール

一般社団法人 出雲観光協会

足立 彩子氏
     

出雲観光ガイド【出雲観光協会公式ホームページ】

豊かな自然と古くから根付く文化を伝え続ける
「大山隠岐国立公園」

── 「大山隠岐国立公園」があるように、島根県は、自然豊かな場所というイメージがあります。改めて「大山隠岐国立公園」の成り立ちについて教えてください。

日御碕, 画像提供:出雲観光協会

「大山隠岐国立公園」は、島根県・鳥取県・岡山県の3県にまたがった国立公園です。1936年2月1日に、大山国立公園として指定されました。

1963年4月10日には、島根県半島(日御碕など)や三瓶山、隠岐地域、そのほか岡山県の蒜山などが編入して、現在の大山隠岐国立公園という名称に変更となりました。

──国立公園に指定されてから90年近く経っているのですね。島根県における、大山隠岐国立公園が果たす役割は一体何でしょうか。

大山隠岐国立公園に限らず、国立公園は、日本を代表する優れた自然の風景を保護するために、環境大臣が自然公園法に基づき指定し、国が直接管理する自然公園のことです。

その中で大山隠岐国立公園としては、自然もそうですが、ここに根付く歴史や文化、「出雲神話」を後世に伝えていけるように務めています。

私は、大山隠岐国立公園の中でも、島根半島の日御碕エリアを担当しています。日御碕について言えば、希少価値のある動植物も数多く生息しており、そういった動植物を守り続けていける様皆さまに伝え環境保護などに意識を向いてもらえるような活動をしています。

ウミネコ, 画像提供:出雲観光協会

また、大人はもちろんのこと、未来ある子どもたちに、この国立公園が大変貴重なものであることを理解してもらえるように、自然を楽しむ体験プランの作成なども行なっています。

そのほかに自然で言えば、「島根半島・宍道湖中海ジオパーク」もあります。ジオパークは、大地の公園という意味で、地域の貴重な地質や地形などの遺産について学び、その環境を守りながら活用していくものです。

日御碕, 画像提供:出雲観光協会

島根半島は、日本海を形成した地質時代の大規模な地殻変動によって作られました。日本海の厳しい波風を、島根半島が天然の防壁となって守ってきました。古代から続く出雲文化を、未来へと引き継いでいくため、周りの皆さんと協力しながら、日々活動しています。

今なお残る、出雲神話の舞台。
ストーリーと重ね合わせることで理解が深まる

──ありがとうございます。大山隠岐国立公園以外にも、日本遺産「日が沈む聖地出雲」としても非常に有名ですよね。

稲佐の浜, 画像提供:出雲観光協会

そうですね。日本遺産は文化庁が認定しており、地域にある魅力的な歴史やその特色を通じて、文化や伝統を語るというものです。ストーリーを語る上で必要不可欠な文化を発信し、地域活性化を図ることを目的としています。

出雲には、古くから伝わる「出雲神話」があります。出雲神話と関わりのある観光スポットにストーリーをあてることで、来てくださったお客様により楽しんでいただけるよう務めています。

稲佐の浜の海岸や日御碕までの道中など、出雲神話に関わるさまざまな観光スポットや自然をまとめ、「日が沈む聖地出雲」という形で、2017年に日本遺産に認定されました。

──日本遺産「日が沈む聖地出雲」には、出雲神話が数多く含まれていると思いますが、有名な出雲神話はありますか。

奈良時代に作られた『古事記』や『日本書紀』、733年に編さんされた『出雲国風土記(※)』などに、出雲神話についての記載があります。その中で、特に大きく取り上げられているのは、「国譲り」や「国引き神話」だと思います。

(※)地名の由来や土地の様子、特産物、言い伝えなどが細かく記されているもの。当時の原本は、すでに失われてしまっているが、写本はほぼ完全な形で残っている。ほぼ完全体で写し伝えられているのは常陸、出雲、播磨、肥前、豊後の5つの中で出雲のみ。

──「国譲り」や「国引き神話」は一体どんなストーリーなのでしょうか。

「国譲り」は、高天原(天上の神々の国)を治めていた天照大神(アマテラスオオミカミ)が、その昔、出雲地方を治めていた大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)に代わり、我が子に出雲地方を統治させたいと、次々と使者を派遣するお話です。

派遣した使者たちが、大国主大神の家来になったり、大国主大神の娘に心奪われ、神殿を建て住みついてしまうなど、なかなか上手くいかないのですが、最終的には、力自慢の武甕槌神(タケミカヅチノカミ)を派遣し、大国主大神の息子の一人で、同じく力自慢の建御名方神(タケミナカタノカミ)と大岩を投げて戦い、武甕槌神が勝利。出雲地方は大国主大神から譲られたという話です。

稲佐の浜, 画像提供:出雲観光協会

「国引き神話」は、『出雲国風土記』の冒頭を飾る神話です。出雲国の創造神である八束水臣津野命(ヤツカミズオミツノミコト)が布のように細長く小さな国だった出雲を、どこかの国と縫いつけて大きな国にしたいという気持ちから、余分な土地はないかと海を眺めるところから始まっています。

最初に新羅(しらぎ)という国の余った土地を幅の広い大きな鋤(すき)を使い土地を切り離し、丈夫な網をかけて、出雲とくっつけました。このようにして、次から次へと国を引っ張ってきては合わせていきました。国を引くのが終わったと判断した八束水臣津野命は、杖をついて「おえ」と言われたことから、その地を意宇(おう)というようになったという話です。

須佐神社, 画像提供:出雲観光協会

出雲神話は、スケールの大きな話なので、フィクションかと思ってしまうのですが、現在の地形や地名と一致することが多くとても興味深いと思います。

──出雲神話の具体的なストーリーを少し聞いただけでも、そのスケールの大きさに驚くばかりです。足立さんのおっしゃる通り、現在の地形や地名と重なることも興味深いですね。出雲神話に触れると、やはり神話の舞台となった場所へ行ってみたいという気持ちになるのですが、実際に訪れることは可能ですか。

実際に今もなお残っているので、ぜひ訪れてほしいと思います。

例えば、先ほどストーリーを説明した、出雲神話「国譲り」の中で、武甕槌神と建御名方神の神様同士が対決した際に投げたとされる大岩が「つぶて岩」です。

実際につぶて岩を見てみると、岩が積み重なっているところがあり、神様同士が大岩を投げた跡だということが分かります。

つぶて岩, 画像提供:出雲観光協会

出雲神話を事前に少し学んでから訪れると、出雲神話とその場所が一致するので、とても楽しいと思います。

「神話は実は苦手だけど少し知りたい」という人は、漫画で分かりやすく解説したものがいくつか発売されています。私も漫画で出雲神話について勉強しました。文字だけの情報よりも頭に入りやすいので、おすすめです。

出典: Amazon

講談社

愛と涙と勇気の神様ものがたり まんが古事記

今なお残るすべては、日本遺産「日が沈む聖地出雲」という
一つのストーリーでつながっている

──漫画ならすんなりと頭に入りそうです。事前知識が少しでもあると、ただ訪問するよりも楽しめますね!そのほか、出雲神話に限らず、足立さんが印象的だと思うエピソードが残る場所はありますか。

日本遺産の構成文化財の一つである「筆投島(ふでなげじま)」のエピソードが印象的です。さきほど紹介したつぶて岩を左手に、海を見ながら日御碕へ上がっていく途中にあります。

筆投島, 画像提供:出雲観光協会

平安時代初期の画家・巨勢金岡(こせの・かなおか)が、日御碕の道中で絵を描こうと訪れた島です。しかし、夕焼けや雲の流れ、海の情景といったように、この地は、時期によって全く異なる表情を魅せるんです。

目まぐるしく変化するその景色があまりにも綺麗で、絵を描けないと筆を投げてしまったという伝承が残っています。絵師が筆を投げるほどの美しい夕景と言われ「筆投島」と名付けられました。

──日が沈む聖地出雲ならではのエピソードだと思いました。足立さんは、日御碕エリアをご担当とのことですが、日御碕の中で特におすすめの場所はありますか。

筆投島と同じく、日本遺産の構成文化財の一つで、国指定の重要文化財でもある「日御碕神社」がおすすめです。

日御碕神社, 画像提供:出雲観光協会

『出雲国風土記』に「美佐伎社(みさきのやしろ)」と記される歴史ある神社です。太陽の神様・天照大神を祀る「日沉宮(ひしずみのみや)」と海を守る神様・素戔嗚尊(スサノオノミコト)を祀る「神の宮」の2つの社殿から成り立っており、総称して日御碕神社と呼ばれています。

日沉宮は、三重県の伊勢神宮が「日の本の昼を守る」のに対し、日御碕神社は「日の本の夜を守る」という神様のお告げにより祀ったのが始まりと言われています。当初はこの言葉の通り、ここからほど近い「経島(ふみしま)」に日沉宮があり、そこで天照大神が祀られていました。

──由緒ある神社なのですね。以前は「経島」にあったとのことですが、「経島」は、一体どんな島なのですか。

経島, 画像提供:出雲観光協会

島根半島・宍道湖ジオパークの指定地域である「経島」は、日本の代表的なカモメの仲間である、ウミネコの繁殖地として、国指定の天然記念物にもなっています。

天照大神が日御碕神社に祀られる前は、この場所に鎮座していたことから、毎年旧暦の7月7日(現在は8月7日)の夕方に、神幸神事(みゆきしんじ)が行なわれています。

経島は普段、日御碕神社の神域として一般の方は入れないのですが、この日だけは日御碕神社の神職が経島に渡ります。その様子を一目見ようと、県内外から多くのカメラマンが来られるんですよ。

神幸神事(夕日の祭り), 画像提供:出雲観光協会

また、角度にもよりますが、8月7日前後は、祠と鳥居を挟んだ奥側にちょうど夕日が沈むので、雰囲気も良くおすすめです。

神幸神事は、夕日を背景に行なわれることが多いことから、夕日のお祭りとも言われています。

楽しみ方は人それぞれ。
興味関心に合わせて、ガイドスタッフの解説や観光ツアーを利用してほしい

──出雲神話も日本遺産「日が沈む聖地出雲」を構成する文化財も、すべて切っては切れない一つの壮大なストーリーだと思いました。そのほか、日御碕で有名な観光スポットはありますか。

ありがとうございます。点々と観光スポットを見るというよりも、出雲神話や日が沈む聖地出雲のストーリーを意識し、訪問することでより楽しめると思います。

そのほか日御碕で有名なのは、島根半島の一番西にある、日本一高い「出雲日御碕灯台」だと思います。通称・白亜の灯台とも言われています。「世界の歴史的灯台百選」の一つで、2022年には、国の重要文化財にも指定されました。

出雲日御碕灯台, 画像提供:出雲観光協会

日本では、登れる灯台が16基しかないのですが、そのうちの一つがこの出雲日御碕灯台です。展望台からは、島根半島の全景を一望できます。晴れた日には、南方に中国山地、北方には隠岐諸島も、望めますよ。

出雲日御碕灯台の展望台からの眺め, 画像提供:出雲観光協会

──真っ白な外壁と日本海とのコントラストが素敵ですね!これまでお話を伺っていて、出雲神話も面白いですが、改めて自然がとても魅力的な地域であるとも感じました。

そうですね。長年多くの方が、この地を守り続けてきたからだと思います。

自然で言えば、日御碕には、島根半島・宍道湖中海ジオパーク内にある遊歩道はきちんと整備されています。この遊歩道周辺には、ゴツゴツとした岩がたくさんあるのですが、これらは、普通の地面ではなく、特徴的な柱状の岩が積み重なってできているんです。

この岩は「柱状節理」と呼ばれ、はるか昔、マグマが冷却し固結する際に、このような五角形や六角形の形になったと考えられています。これもジオパークの地形としてとても有名です。

柱状節理, 画像提供:出雲観光協会

福井県の東尋坊の柱状節理も有名なのですが、同じ柱状節理でもマグマの固まる速さでその形は異なります。日御碕の柱状節理は形状がとても細かいところが特徴的で、とても目を引く地形です。

地形や地質について気になることがあれば、バス停「日御碕灯台」から徒歩ですぐの「日御碕ビジターセンター」内に、ジオパーク認定ガイドスタッフも勤務しているので、話を聞いてみるのも良いかと思います。

──同じ柱状節理でも形が異なるのですね!ジオパーク認定のガイドスタッフが「日御碕ビジターセンター」にはいるとのことですが、センターでは、どういう取り組みをされていますか。

2019年に日御碕観光案内所が移転し、「日御碕ビジターセンター」として生まれ変わりました。

日御碕ビジターセンター, 画像提供:出雲観光協会

日御碕ビジターセンターには、ジオパークや柱状節理に関する案内板の設置や関連するパンフレットが置いてあります。また、楽しく学んでもらおうと、地質と地形がもたらす恵みや災害をテーマとした動画もセンター内で放映しています。

興味のある方は、動画を熱心に見たり、ガイドスタッフに話を聞いたりされていますね。

──自分でパンフレットを読むよりも、映像やガイドスタッフの説明の方が頭に入りやすそうです。来てくださった方に楽しんで学んでもらいたいという皆様の気持ちが伝わってきます。日御碕はとても魅力的なところだということがとても伝わってきたのですが、足立さんおすすめの訪問時期があれば教えてください。

季節ごとに見れる動植物や景色が異なるので、どの時期に訪れても楽しめると思います。個人的におすすめなのは、11月から3月頃の秋と冬です。涼しい時期は空気が澄んでいて、夕日などの景色がとても綺麗です。

また、さきほど説明した経島に、ウミネコが飛来してくるのが11月下旬から12月上旬です。経島に渡ったあとは、稲佐の浜の方へ餌を取りに行き、松の葉を集めて、自分のテリトリーとなる巣を作ります。そこから繁殖して産卵し、夏頃にはここから飛び立っていくのですが、経島に滞在する期間は、ウミネコが乱舞する様子を見ることができます。

ウミネコという名前にもあるように、普通の鳥のような鳴き声ではなく、猫に似た声で鳴きます。

ウミネコ, 画像提供:出雲観光協会

日常生活において、なかなか見れない貴重なウミネコの姿を間近で見れるのは、長年多くの方が守り続けてきた、ここならではの景観だと思います。

──ありがとうございます!最後となりますが、こういった貴重な体験を肌で感じられる、観光ツアーなどは出雲観光協会で実施していますか。

日御碕地区の自然などを体感堪能していただけるツアーをいくつかご用意しております。

島根半島からの絶景を眺めながら、手ぶらで参加できる「手ぶらdeピクニック」や日御碕の海、山に入り体全身で体感できる「日御碕自然体感プログラム(トレッキング・シーカヤック)」などを時期により、実施しています。

手ぶらdeピクニック, 画像提供:出雲観光協会

日御碕自然体感プログラム(シーカヤック), 画像提供:出雲観光協会

日御碕自然体感プログラム(トレッキング), 画像提供:出雲観光協会

そのほか、一般的なガイドツアーを実施しており、ゆっくりと観光地を巡って楽しんでもらうものもあります。

私たちの想いとしてどのツアーでも共通しているのは、楽しみながら出雲について学んで、うんちくを一つでも二つでも持って帰ってもらいたいということです。体験した方が、家族や友人などに話をしたことがきっかけで「出雲に行ってみようかな」と少しでも思ってもらえたら嬉しいですね。

観光ツアーについては、出雲観光協会のホームぺージにある「地元おすすめ旅行企画」から募集中のツアーを掲載しています。また、都度SNSでも情報発信しているので、チェックしてみてください。

ぜひ、お時間がある方は出雲に遊びにいらしていただければと思います。 

──多くの方が古くから続く出雲の地を守り続けていることや魅力あふれるこの地が、一つのストーリーとしてつながっていることなどがインタビューを通して、とてもよく伝わってきました。足立さん、ありがとうございました!



【関連記事】あわせて読みたい

このストーリーを
シェアしよう

【出雲観光協会にインタビュー】出雲のストーリーを伝えながら、自然や文化を後世に残していく | https://jp.pokke.in/story/15618

Pokke公式SNSアカウントを
フォローして、
世界の旅先の物語に触れよう

出雲のストーリー

一覧で見る

共有

https://jp.pokke.in/story/15618

リンクをクリップボードにコピーしました。