池袋をもっとディープに知ろう!
【PART.5】文学と芸術の街としての池袋
「池袋をもっとディープに知ろう!」シリーズでは、池袋の歴史をディープに掘り下げるをテーマに、副都心への発展、闇市とスガモプリズン、女性オタク文化、チャイナタウン、文学・芸術の5つのパートにわけてご紹介します。記事を通して、池袋という都市の奥深い魅力をご紹介します。
この記事では、池袋を文学と芸術の側面から特集します。 文学ではミステリー小説との関連が深く、特に江戸川乱歩や有名なミステリー小説をご紹介。芸術では劇場や映画館が多くあり、東京芸術劇場やロサ会館などの有名な施設と歴史をご案内しています。
1.池袋は文学や芸術の面でも特筆すべき点がある
池袋は文学や芸術の面においても特筆すべき点があります。
文学の面では、ミステリー小説が挙げられます。
池袋では推理小説家として有名な江戸川乱歩の住宅跡があり、現在も中を見ることができます。
また、石田衣良による小説『池袋ウエストゲートパーク』の舞台になるなど、大衆文学の聖地となりました。
芸術においては、映画館や劇場が数多く出来、芸能の分野が発達しました。
闇市の記事でもご紹介しましたが、闇市が映画館周辺に出来た経緯もあります。
今回の記事では池袋の文学や芸術の発展についてご紹介します。
2.ミステリー小説の街、池袋
池袋はとくにミステリー小説の作者に好まれる土地だと言えます。
池袋に居を構えた有名な作家は江戸川乱歩です。
その他、大下宇陀児(おおしただうる)、飛鳥高、泡坂妻夫がいます。
また、ミステリー小説の舞台としても有名です。
京極夏彦の『姑獲鳥の夏』、石田衣良『池袋ウエストゲートパーク』が有名な作品です。
江戸川乱歩が池袋に引っ越したきっかけや、池袋で生み出した作品は何でしょうか。
また、池袋を舞台にしたミステリー小説はどのような物語でしょうか。
ミステリー小説の街としての池袋を掘り下げていきましょう。
江戸川乱歩と池袋
江戸川乱歩は明治27年三重県生まれ、名古屋育ちの小説家です。
早稲田大学進学の際に上京し、さまざまな職業を経験したあと、大正12年『二銭銅貨』という小説で作家デビューします。
乱歩が池袋に引っ越してきたのは昭和9年。
26箇所の転居をした乱歩が、昭和40年の最期まで住んだ場所となりました。
当時の池袋はまだ副都心として発展途上で、のどかな風景がみられたため、乱歩が気に入ったのではないかと考えられています。
その前に居た芝区車町の喧騒な環境と比較して、転居当時の乱歩邸は「梅林」「ツツジ」「畑」「芝」「築山」などに囲まれ、今とはおよそかけ離れたのどかさであったと想像される。そんな自然の豊かさが、中心部のごみごみとした雰囲気に愛想をつかした乱歩を惹きつけたのかもしれない。
出所:https://www.rikkyo.ac.jp/research/institute/rampo/
乱歩が池袋に移り住んで書き始めたのは評論です。
日本に探偵小説を広めたいと評論を執筆した乱歩は、『鬼の言葉』『幻影城』といった推理小説への愛にあふれた評論集を刊行しています。
昭和11年には『怪人二十面相』などの少年探偵シリーズを執筆します。
少年探偵シリーズは現在でも幅広い世代に愛される作品となりました。
乱歩は昭和40年、脳出血で死去します。
時を経て2003年、乱歩邸は豊島区指定有形文化財に指定されました。
現在は立教大学が乱歩邸を所有し、乱歩のコレクションの所蔵と大衆文化の収集を行っています。
立教大学公式YouTube,旧江戸川乱歩邸
池袋を舞台にした有名なミステリー小説2作
先述した通り、池袋はミステリー小説の街として知られています。
京極夏彦の『姑獲鳥の夏』は池袋・雑司ヶ谷の鬼子母神堂が舞台で、久遠寺医院の院長の娘が妊娠20ヶ月を迎えた怪奇現象を解き明かす物語です。
この小説に出てくる姑獲鳥(うぶめ)という妖怪は、亡くなった産婦だと伝えられています。
鬼子母神もまた人の子を攫って食べた鬼女だったといわれており、繋がりを持って書かれた小説なのです。
『姑獲鳥の夏』は京極夏彦氏のデビュー作であり、担当編集者から有名作家の別名義の投稿だと思われた傑作で、映画化もされています。
石田衣良による小説『池袋ウエストゲートパーク』も、池袋が舞台です。
池袋西口公園近くの果物屋の息子・真島誠が、池袋を舞台にさまざまな難事件を解決する物語。
宮藤官九郎脚本によるテレビドラマ化や、2020年にはテレビアニメ化された人気作です。
暴力的な描写も多く、アナーキーな雰囲気が若者に人気となりました。
池袋を舞台にしたミステリー小説の2作が、池袋という街を盛り上げるのに一役買っています。
豊島区は2021年から江戸川乱歩賞との連携を開始し、ミステリー小説と池袋の関係を強化しています。
3.芸術の街、池袋
池袋と芸術との関係は主に舞台や映画にあるといえます。
副都心として成長していった池袋には、数多くの劇場や映画館が出来ました。
その中でも、有名な施設や歴史の長い施設をご紹介します。
東京芸術劇場
東京芸術劇場
東京芸術劇場は、1990年に開館した総合芸術文化施設で、
池袋西口公園のすぐそばにあります。
闇市の項目でも説明しましたが、西口で復興マーケットが広まったのは豊島小学校の跡地です。
闇市が撤去されて以降、声楽家によって買い取られた豊島小学校の跡地はコンサートホールと劇場の施設を作ることになりました。
東京芸術劇場の特徴は、積層型になった構造です。
地下鉄有楽町線に音が響く懸念があったため、騒音・振動防止のために採用されたのが積層システムです。
大ホールでは合唱やオーケストラが行われ、中ホールでは演劇、ミュージカル、オペラが行われています。
ロサ会館
ロサ会館は池袋西口にある総合レジャービルです。
長い歴史を持っており、特に館内にあるシネマ・ロサは1945年、戦後すぐに邦画のロードショー館として開館した映画館です。
他にもシネマセレサ、シネマリリオ、シネマ東宝がありましたが、ロサとセレサ以外は閉館しています。
1968年に現在のロサ会館が完成し、ロサとセレサもリニューアル。
名画座としてハリウッド系、アート系の旧作映画を上映しますが、現在では再びロードショー館となり、自主企画の上映会、若手作家のバックアップも行っています。
ロサ会館はタイトーの創業者であるミハエル・コーガンとの出会いから、日本でまだ珍しかったインベーダーゲーム機を導入し、ゲームセンターの先駆として営業を開始します。
ロサ会館は芸術、娯楽の面でかなり池袋を支えた存在だと言えます。
新文芸坐
新文芸坐は東池袋にある映画館です。
1956年、作家の三角寛が発足した人世館の姉妹館「文芸坐」が建てられました。
映画関連書籍を販売するしね・ぶてぃっく、文芸坐地下劇場、小劇場のル・ピリエが併設。
松竹系のロードショーを行いましたが、人世館の閉館後は名画座として運営されます。
1997年に一度閉館しますが、2000年には同ビルのテナントとして新文芸坐がオープン。
旧作映画上映のほか、落語やお笑いのトークライブ会場、また映画監督や俳優のトークショーなどを行っています。
コアなファンが非常に多く、2000年の新文芸坐オープンや、2022年のリニューアルオープンには多くの人が訪れた映画館です。
4.池袋は大衆文化の街
池袋は文学・芸術の面でも有名な街です。
ミステリー小説や映画、劇場など、主に大衆文学や大衆芸術において秀でていると言えます。
今までの記事であるオタク文化や、闇市のカストリ文化とも重なる特徴ですね。
農村だった池袋は、巨大ターミナル駅の成長とともに副都心へと発展し、さまざまな歴史が生まれていきました。
池袋という街を定点観察しながら、池袋に生まれた文化や歴史を紹介する記事も、今回で終わりとなります。
この記事によって皆さんが池袋を深く知り、池袋へ訪れるきっかけになると幸いです。
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