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プラド美術館

1819年に王家のコレクションをもとにオープンしたプラド美術館は、ベラスケスやゴヤの名画をはじめとする8,000点の作品を誇り、年間250万人が訪れる世界屈指の美術館です。

この記事では展示されている作品の一つ、「快楽の園」をご紹介します。

今から500年もの昔、一度見たら忘れられないユニークな作品が生まれました。

初期ネーデル絵画の巨匠ヒエロニムス・ボスの傑作「快楽の園」です。

実はこの作品は美術史上最大の謎とも呼ばれ、いまだ完全な解釈ができていない作品なのです。

高さは2m20cm、横幅は4mあまりで3枚のパネルに別れた祭壇画風の作品です。

左から「地上の楽園」、「快楽の園」、「地獄」とタイトルが付けられています。

地上の楽園と名付けられた左のパネルは、その名の通り聖書に登場するエデンの園を表現しています。

中央に立つのはキリストの姿をした神。

座っているアダムにイブの手を引いて二人をめあわせている場面です。

全体的に穏やかな雰囲気が感じられますが、中央の池の右側には蛇が巻きついた木が描かれています。

これはやがて二人が知恵の実を食べて、エデンの園を追放されてしまうことを暗示しています。

次に中央の大きなパネルを見てみましょう。

ここで描かれているのは「快楽」そのもの。

一糸まとわぬ男女が一面にこれでもかと描かれています。

遠くには奇妙な構造物が描かれています。

中央では女たちの周りを、動物にまたがった男たちが遠巻きにしています。

男を快楽に誘う存在として、女性が表されているのでしょう。

手前に目を移すと、裸の男女たちがカップルやグループを作っておおらかに交流している様子が見られます。

現代の私達からすると、快楽と名付けられている割には直接的な性的描写は無く無垢でおおらかな印象を受けます。

しかし、この作品が描かれたのは性的描写がタブー視されていた時代であり、作者のボスは敬虔なキリスト教徒でもあります。

見るものが見ればすぐに分かるような様々なメタファーが隠されています。

例えば、手前の巨大なムール貝の中から2組の足がはみ出しているのは、明らかに性的な象徴だとされています。

巨大ないちごは肉体の快楽のはかなさの象徴。

動物たちは人間の低次元の欲望の象徴であり、フクロウは異教徒の象徴です。

まだまだ確認されていないメタファーが多く残されているようです。

中央パネルは人間の快楽を礼賛しているように思われますが、必ずしもそのように解釈できない理由が次に見る右のパネルです。

タイトルは地獄の世界。

エデンの園から追放された人間が快楽の園で性に溺れ、地獄の世界でその罪を償うことになるのです。

一転して、暗く不気味な生物がうごめく地獄の世界では、裸の人間たちが襲われ、追い立てられ、逃げ惑っています。

中央では巨大な一組の耳に挟まれたナイフが人々を切り刻んでいます。

その先には、卵の殻に人間の頭と木の幹のような足が生えた巨大な生物がいます。

頭の上には円盤があり、悪魔が乗っています。

この顔は作者のボス自身だとも言われています。

これらの不思議な生物が何を意味しているのかは解釈が別れています。

手前は音楽地獄ともいわれていますが、リュートや竪琴、縦笛に、悪魔が人びとをくくりつけたり、体を押し込んだりしています。

右側の鳥の頭をした人間は、人を飲みこみながら、人を排泄しています。

この地獄図は、最もボスらしい独創性が発揮された作品だと言われています。

それぞれの箇所が何を意味しているか、いまだ分かっていないことの多い絵ですが、ボスが描いた幻想的で超現実的な世界は近現代の芸術に通じるものがあります。

プラド美術館のストーリー

エリア スペイン > バルセロナ周辺
施設名 プラド美術館
住所 Paseo del Prado, s/n, 28014 Madrid
営業時間 月曜日~土曜日 10:00~20:00 
日曜日・祝日  10:00~19:00
Webページ https://www.museodelprado.es/
アクセス 地下鉄1号線Anton Martin駅
RENFE C1線
Atocha駅
料金 14ユーロ

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