ガウディのメルヘンな世界と有名なトカゲを見に行こう。グエル公園の見どころ
ガウディのメルヘンな世界
グエル公園は、元々は、ブルジョワ階級の人々のために作られた庭園住宅でした。
大スポンサーだったグエル伯爵がパトロンとなり、1900から1914年にかけてガウディのデザインによって建設されました。
自然を愛するガウディらしく、小高い丘の上に自然をそのまま残した姿で、広場や邸宅、礼拝堂などを設計したのです。
しかし、町の中心から離れていて地の利が悪く、公共の交通手段もないという悪条件の上、ふたりの進み過ぎた発想と自然の中で暮らすという価値観は、当時の人々にはあまり受け入れられなかったようです。
また、敷地面積の6分の1しか建物を建ててはいけないとか、勝手に木を伐採してはいけないなど、様々な規制があったために、結局は現在学校になっているグエル伯爵家と現在博物館であるガウディの家の他は、たった1軒しか売れず、2人の夢であった英国風庭園式住宅の夢は、断念されたのでした。1914年のことです。
そのような理由により、結局住宅は売れ残り、また市民戦争の影響で建設工事が中断したため、結果として未完のまま1922年に、市に買い取られて市民公園になったというわけです。
そしてその後、1984年には、アントニオ・ガウディ作品群として世界遺産に登録されました。
グエル公園のエントランスに足を踏み入れると、大きな階段が出迎えてくれます。
階段にはたくさんの装飾が施されており、所々に彫刻を見ることができます。
この階段のテーマはギリシャ神話。
人々を非日常の世界へと誘う舞台装置です。
まるで、劇場の舞台へと登るかのように配置された大きくせり上がった階段は迫力満点です。
たくさんの観光客がこの美しい階段をバックに最初の記念撮影を行っています。
階段を見上げると途中から二手に分かれている階段の真ん中に大トカゲが見えます。
青色のモザイク調の大トカゲは、言わずと知れたバルセロナのシンボル的存在。
グエル公園の泉の守り主でもあり、なんと全長2.4メートルもあります。
大トカゲの上の方に位置する丸いオブジェには、モザイクで蛇が象られております。
この蛇はギリシャ神話の中でモーゼを守ったとされるネフシュタンです。
続いてその下の方には、ギリシャ神話で”世界のヘソ”と呼ばれるギリシャの都市デルフィを象徴した石が見えます。
見た目にも美しいグエル公園の大階段ですが、実は神話の世界をモチーフにしていたのですね。
ちなみに階段の両脇の外壁には伝統的な化粧タイルの構図をトレンカデイスで表現した様々なデザインのパネルが並んでいます。
トレンカデイスとは、モデルニスモ期によく使われた工法で、ガウディ作品でよくみられる装飾です。
しかし実は、トレンカデイスとはガウディの発明ではなく、昔から伝統的に使われていたそうです。
細かく割ったセラミックを張り合わせて一種のモザイクにする技法ですが、広くポピュラーに使われていました。
ガウディはこの技法を様々な作品に使用しています。
さあ、それでは、そんな美しい階段をゆっくりと登っていきましょう。
階段を登って行くと、たくさんの柱が立ち並ぶホールが見えてきました。
このホールは当初市場として使用するために作られました。
柱は全部で86本。
グエル伯爵から建築の中にギリシャ神話を入れるように指示されたガウディは、この柱にもドーリア式の建築様式を取り入れています。
ドーリア式とは、古代ギリシャ建築における様式のひとつであり、イオニア式、コリント式と並ぶ3つの主要な様式の中で最も古く、荘厳で力強いのが特徴です。
しかし、ガウディの手にかかると、シンプルなドーリア式の列柱もこんなにエレガントな表情へと変化してしまいます。
列柱の下の部分にはトレンカデイスが用いられており、さらに優雅な天井にも注目です!
天井を見上げてみると、大きな円盤が4つ目に入ります。
この円盤は「太陽」を表しており、その周りのそれぞれの小さな4つの円盤は、「月」を表しています。
ガウディは天体の動きこそが、生命の源と考え、生命のサイクルをここで表現したかったのでしょう。
ですからこの場所が、生鮮食品を扱う市場になる予定だったというのがわかります。
話によれば、実はこれらの制作にあたったのは、スペイン人建築家ジョセップ・マリア・ジュジョールという人物で、彼はガウディの裏方の役目を担っていた重要な人物でした。
施主達とガウディが揉めたために建設工事がストップしてしまったカサ・ミラを最終的に完成させたのも、実はこのジュジョールでした。
ちなみにこの円柱の下にはなんと貯水槽が設けられていて、上に位置する大広場の雨水を貯める仕組みになっているのです。
デザインだけでなく、機能性も兼ね備えている建築。
さすが天才建築家ガウディと言われる所以ですね。
また、よくここでは、路上ライブが行われていて、バイオリンやギター、あるいはサクソフォーンなどを弾いている人をみかけます。
運良く出会ったら、しばし音楽に酔いしれて、チップを置いたりCDを購入してあげても旅のよい思い出になるかもしれませんね。
市場になる予定だった下のホールから上がってくると、大きな広場へと出ます。
この広場はギリシャ劇場のように半円形の形をしていますが、実際にここでは住民たちが集まるオープンスペースのような役割を担っていました。
まるでギリシャの都市国家のようですね。
そして、もうひとつの役割がホールの列柱下にある貯水槽へ雨水を送ることです。
本当によく考えられていて、驚かされることばかりです。
この広場からは、バルセロナの街が一望できます。
このグエル公園の中で一番の絶景スポットといえるでしょう。
そしてこの広場で見逃せないのが、広場の周りを彩るなが〜いベンチ。
トレンカデイスを用いた、全長110メートルもある蛇行した形のこのベンチは、先ほど触れたガウディの裏方を務めて貢献したジョセップ・マリア・ジュジョールによるものです。
ガウディ作品には、たくさんトレンカデイスが用いられておりますが、なかでもこのベンチは最大規模!
カラフルな色彩とパッチワークのようなトレンカデイスがマッチして遊び心満載の広場ですね。
見た目は奇抜ですが、座ってみると腰と背中がベンチにフィットしてなかなかの座り心地です。
そして何よりもこのベンチ、素晴らしい見晴し台の役割を兼ね備えているのです。
暖かい日差しが降り注ぐ広場で、美しいベンチに座ってひと休み。
目の前にはバルセロナの街が大きく広がっています。
まるで時間が止まっているかのように感じる不思議な場所です。
いつも賑わっている、観光客にとても人気のある絶景ポイントです。
さて、それではここでもうひとつの見どころをご紹介したいと思います。
それはバルセロナ市街の風景と反対側。
奥に並んでいる石造りのヤシの木の柱列です。
ゴツゴツとした石を組み合わせながら、ヤシの木をかたどって作った柱の上の道路にはなんと本物のヤシの木々が植えられています。
その美しいコントラストは自然を愛したガウディならではの見事な建築といえるでしょう。
ちなみに、ヤシの木の柱が立ち並ぶあたりは無料エリアですので、有料エリアを先に見学したあとに、ゆっくり写真を撮りながら無料エリアを散策するのがおすすめです。
施設情報
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