潜伏キリシタンと長崎の歴史を巡る旅
5-1. 『沈黙–サイレンス–』で潜伏キリシタンと長崎を知る 〜映画史に残る名作とともに〜
「潜伏キリシタンとは何か?世界文化遺産に登録された長崎の歴史を学ぶガイダンス」では、長崎県の「潜伏キリシタン」について6つのパートに分けてご紹介します。記事を通して、潜伏キリシタンがどのような存在なのか、その劇的な歴史背景、ユニークな信仰の特徴など、潜伏キリシタンの魅力がわかります。
5つ目のパートでは「潜伏キリシタンを深く知れる映画や本」について。
5-1と5-2の2部構成となっています。
この記事では映画『沈黙–サイレンス–』についてご紹介します。
映画の内容と、長崎のゆかりの地について知り、さらに深く潜伏キリシタンについて理解を深めていきませんか?
1. 映画『沈黙−サイレンス−』とは何か
『沈黙−サイレンス−』とは、『ヒューゴの不思議な発明』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で有名なマーティン・スコセッシ監督の2016年の映画作品です。
遠藤周作の小説『沈黙』を原作とし、忠実に再現されています。
スコセッシ監督は『沈黙』を1988年に読み、非常に感銘を受け、遠藤周作氏と何度も対面して企画を温めました。
2017年の第89回アカデミー賞では撮影賞にノミネート。
撮影場所は主に台湾ですが、長崎のロケーションハンティングもしっかり行っています。
俳優陣も見どころで、
主役のロドリゴ役は『アメイジング・スパイダーマン』で有名なアンドリュー・ガーフィールドです。
ガルぺ役は『スター・ウォーズ フォースの覚醒』や『ブラック・クランズマン』で有名なアダム・ドライバー。
フェレイラ役は『ナルニア国物語』シリーズ、『レ・ミゼラブル』のリーアム・ニーソンが演じています。
キチジロー役は窪塚洋介、井上筑後守役はイッセー尾形と、豪華俳優陣です。
棄教したロドリゴ司祭を追体験する物語
『沈黙–サイレンス–』は島原・天草一揆の後の物語です。
ポルトガルのイエズス会で司祭をしているロドリゴとガルぺは、日本に赴いた師のフェレイラが弾圧により棄教したという報告を聞き、彼を助けるために日本に向かいます。
一行はマカオで出会ったキチジローという頼りなさげな日本人の漁師に案内してもらい、無事日本の長崎のトモギ村に密入国できました。
トモギ村や五島列島で司祭として歓迎され、束の間の充実した日々を過ごす二人でしたが、長崎奉行所に密告が入ったことにより、離れ離れに追われる身となります。
ロドリゴはキチジローの密告により、長崎奉行所へ連行されました。
キチジローは捕らえられたロドリゴの元に繰り返し現れ、告解を求めます。
ロドリゴはそんな彼を嫌悪しながらも告解を受け入れました。
厳しくキリシタンを取り締まる長崎奉行所トップの井上筑後守と対話し、たくさんの信徒の殉教を目の当たりにしたロドリゴ。
神の試練の重さに疲れ、「なぜ神は黙っているのか」と苦悩します。
牢に入ったロドリゴの元に、奉行所から命じられたフェレイラが現れます。
フェレイラは棄教するようにロドリゴを説得しますが、ロドリゴは聞き入れません。
精神状態が追い詰められたロドリゴは、その間ずっと聞こえてくる看守の「鼾(いびき)」に腹を立てます。
フェレイラは看守の鼾ではないと答えました。
「とっくに棄教しているにもかかわらず、ロドリゴのために穴吊りの拷問を受けている信徒たちの呻き声である」と告げます。
ロドリゴはイエスからこうした啓示を受けました。
「踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生れ、お前たちの痛みを分つため十字架を背負ったのだ」
とうとうロドリゴは踏み絵を行い、棄教するのです。
棄教したロドリゴは「岡田三右衛門」という名をもらい、江戸に住んで一生を終えました。
原作小説との比較
基本的に非常に原作に忠実です。
映像で描かれる一連のシークエンスは、小説を読んだ方なら既視感を覚えるほどではないでしょうか。
反面、海外映画だけあって、通辞と呼ばれる通訳役以外にも、キチジローやトモギ村の長老、井上筑後守などが司祭に英語で話しているのは、原作にはない表現です。
終盤近くについても違いがあります。
ロドリゴはキチジローと和解したように描いていますが、原作小説ではキチジローは怒りを露わにしました。
また、ロドリゴは死ぬ間際にロザリオをもって火葬されますが、これは小説には描かれていません。
原作は役人による日誌が引用され、ロドリゴが死亡した報告のみで終わります。
ロドリゴが本当にキリスト教を棄てたか否か、スコセッシ監督の解釈が追加されていると言えるでしょう。
遠藤周作氏の小説とスコセッシ監督の映画とを比べてみると、少し違った面白さがあり、おすすめです。
2. 長崎にある『沈黙–サイレンス–』ゆかりの地
『沈黙−サイレンス−』の長崎での撮影スポットや、ゆかりの地をご紹介します。
冒頭でも述べた通り、『沈黙–サイレンス–』の撮影は主に台湾で行われましたが、ロケーションハンティングは長崎でいくつか行っています。
キリシタン殉教の地
雲仙地獄
『沈黙−サイレンス−』の冒頭で、フェレイラ司祭の見せしめとして、潜伏キリシタンが熱湯を注がれる拷問をされています。
雲仙地獄は温泉の名所ですが、キリシタン殉教の地としても知られています。
2016年にリニューアルされ、熱気を足で感じる「足蒸し」や、温泉たまごを楽しめる「雲仙地獄見台」など、五感を使って楽しめるスポットがいくつかできました。
住所 | 長崎県雲仙市小浜町雲仙 Google Mapで開く |
営業時間 | 24時間(夜間のライトアップなし) |
URL | https://www.unzen.org/watch/jigoku/ |
電話番号 | 0957-73-3434 (雲仙温泉観光協会) |
施設のチケットやオプショナルツアーを予約
雲仙地獄のアクティビティ
大人1名あたり
¥112,821~
ロドリゴとガルぺの最初の住居
バスチャン屋敷跡
トモギ村に着いたロドリゴとガルペは粗末な小屋の中で役人やよその村人に見つからないよう生活します。
モデルになったとされる場所はバスチャン屋敷跡です。
バスチャンは日本人伝道士であり、潜伏キリシタンのために予言やバスチャン暦という日繰りを残した人物です。
バスチャン屋敷跡は、彼が役人に見つからないように暮らしていたとされる場所で、暗い山奥にあります。
住所 | 長崎県長崎市新牧野町1397‐1 Google Mapで開く |
営業時間 | 24時間 |
URL | https://www.city.nagasaki.lg.jp/shimin/190001/192001/p000614.html |
電話番号 | 095-829-1193(長崎市 文化観光部 文化財課 ) |
施設のチケットやオプショナルツアーを予約
バスチャン屋敷跡の施設情報
大人1名あたり
¥0~
水責めの刑地
キリシタン洞窟
役人の取り締まりを回避できなかったトモギ村のモキチとイチゾウは、海岸に磔にされ、段々と弱って死んでしまいます。
五島にはキリシタンワンドと呼ばれるキリシタン洞窟があります。
役人の目を逃れるためにここに隠れていたキリシタンは、船に見つかり、弾圧を受けます。
1967年には十字架と4mのキリスト像が設置されました。
住所 | 長崎県南松浦郡新上五島町若松郷 Google Mapで開く |
営業時間 | – |
URL | https://www.nagasaki-tabinet.com/islands/spot/100080 |
電話番号 | – |
施設のチケットやオプショナルツアーを予約
キリシタン洞窟の施設情報
大人1名あたり
¥0~
物語の中心舞台
長崎奉行所(長崎歴史文化博物館)
作中、舞台はトモギ村から長崎奉行所へと移ります。
長崎奉行所では井上筑後守との問答や、捕らえられた潜伏キリシタンたちとの告解、そしてロドリゴの踏み絵が行われます。
長崎奉行所は、長崎歴史文化博物館で、復元された建物を見ることができます。
敷地内には遠藤周作が通ったとされるレストラン「銀嶺」も移転し、営業しています。
住所 | 長崎県長崎市立山1丁目1−1 Google Mapで開く |
営業時間 | 4月~11月 8:30~19:00 12月~3月 8:30~18:00 |
URL | http://www.nmhc.jp/ |
電話番号 | 095-818-8366 |
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長崎奉行所(長崎歴史文化博物館)のアクティビティ
大人1名あたり
¥14,400~
美しい海での簀巻き
根獅子の浜
ロドリゴへの見せしめのために、潜伏キリシタンたちは簀巻きにされ、とても綺麗な青い海へ身動きができない状態で沈められます。
居合わせたガルぺは潜伏キリシタンたちを救うために海に飛び込み、そのまま殉教しました。
平戸にある根獅子の浜は、多くのキリシタン殉教者が出た美しい浜辺です。
「昇天石」と呼ばれる小岩で多くの潜伏キリシタンが処刑されました。
小岩から天国へ逝ったとして、聖地になっています。
住所 | 長崎県平戸市根獅子町(根獅子海水浴場) Google Mapで開く |
営業時間 | 24時間 |
URL | https://www.nagasaki-tabinet.com/blog/tabibu/takeshi_tomonaga/202111 |
電話番号 | 0950-22-4111(平戸市観光課) |
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根獅子海岸の施設情報
大人1名あたり
¥0~
トモギ村の海を望見する
沈黙の碑
遠藤周作氏の友人によって建てられた「沈黙の碑」は、トモギ村のモデルとなった外海地区にあります。
沈黙の碑には
「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです」
という刻字が。
碑は海を見下ろす高台にあり、遠藤周作文学館も見ることができます。
住所 | 長崎県長崎市西出津町 Google Mapで開く |
営業時間 | – |
URL | https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/61044 |
電話番号 | 0959-24-0211(長崎市外海地域センター) |
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沈黙の碑の施設情報
大人1名あたり
¥0~
3. 潜伏キリシタンの理解を深める『沈黙–サイレンス–』ゆかりの地へ
『沈黙–サイレンス–』について理解が深められたでしょうか。
マーティン・スコセッシ監督によるこの映画作品は、遠藤周作氏の原作小説に非常に忠実に制作され、絶賛されています。
『沈黙–サイレンス–』は、潜伏キリシタンの苦しみを目の当たりにしたロドリゴが、神の沈黙の意味を理解し、棄教するまでを描いた物語です。
スコセッシ監督は長崎のロケーションハンティングを行い、たくさんのスポットを巡りました。
長崎にある潜伏キリシタンゆかりの地を中心に、遠藤周作氏の描いた世界を再現しています。
再現された映像はとても素晴らしく、『沈黙』の世界観に浸ることができます。
潜伏キリシタンに思いを馳せ、理解を深められるゆかりの地へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
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