潜伏キリシタンと長崎の歴史を巡る旅
5-2. 潜伏キリシタンを知る映画・本・舞台10選
「潜伏キリシタンとは何か?世界文化遺産に登録された長崎の歴史を学ぶガイダンス」では、長崎県の「潜伏キリシタン」について6つのパートに分けてご紹介します。記事を通して、潜伏キリシタンがどのような存在なのか、その劇的な歴史背景、ユニークな信仰の特徴など、潜伏キリシタンの魅力がわかります。
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5つ目のパートでは「潜伏キリシタンを深く知れる映画や本」について。
5-1と5-2の2部構成となっています。
潜伏キリシタンは、その特殊な運命が様々な人々の目に魅力的に映り、モチーフになった本や映画があります。
この記事では、潜伏キリシタンがモチーフになった代表的な作品をご紹介しましょう。
1. 潜伏キリシタンの映画・本・舞台10選
潜伏キリシタンがモチーフとなった映画・本・舞台を6選、時代ごとにご紹介していきます。
若桑みどり『クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国』上・下(安土桃山時代)
クアトロ・ラガッツィとは、イタリア語で「四人の少年」という意味。
豊臣秀吉の政権下、セミナリヨに通っていた優秀なキリシタンの少年四人が天正遣欧使節団としてヨーロッパに派遣され、日本に戻るまでが書かれた歴史書です。
天正遣欧使節団は旅先でいろいろなことを学び、スペイン王に謁見し、充実した旅をしました。
しかし、日本に帰国すると打って変わってキリスト教の弾圧を受け、潜伏しなければならなくなります。
美術史が専門の著者による詳細な調査と、読みやすい文章で、安土桃山時代の日本と世界のキリスト教の関係がよくわかる本です。
舞台 刀剣乱舞『綺伝 いくさ世の徒花』(安土桃山時代)
人気ゲームが原作の2.5次元舞台です。
西暦2205年、時代を自由に行き来できるようになり、歴史修正主義者が過去を侵略。
審神者(さにわ)と呼ばれる者が刀剣の付喪神「刀剣男士」とともに歴史修正を阻止します。
この舞台は慶長元年(1596年)、全国からなぜか難を逃れたキリシタンたちが熊本に潜伏しているのを発見されるところから始まります。
熊本では、細川ガラシャを中心に、キリシタンによる神の国を作る歴史修正が行われようとしていました。
大村純忠、有馬晴信、高山右近、小西行長といった有名なキリシタン大名に加え、天正遣欧使節団も登場します。
ファンタスティックではありますが、潜伏キリシタンを知る導入としては十分な舞台です。
清涼院流水『純忠 日本で最初にキリシタン大名になった男』(安土桃山時代)
ミステリー小説、漫画原作者として有名な著者によって、7年の取材を経て書かれた歴史小説です。
タイトル通り、大村純忠は日本の大名で初めてキリシタンになりました。
大村純忠は領内の寺社焼き討ちをしたり、臣下や民衆をキリスト教へ改宗させます。
天正遣欧使節団を派遣したのも、大友宗麟と大村純忠です。
大村純忠の死後すぐに発令された伴天連追放令によってキリスト教は禁教となりますが、キリスト教は潜伏キリシタンによって続けられていきます。
潜伏キリシタンの長い歴史のはじまりとなる物語です。
清涼院流水『ルイス・フロイス戦国記 ジャパゥン』(安土桃山時代)
日本でキリスト教を布教し、『日本史』という著書を残したポルトガル宣教師ルイス・フロイスの伝記的小説です。
フロイスは大村純忠と親交がありましたが、織田信長の庇護も受けてキリスト教を布教していました。
しかし、織田信長と大村純忠の死後、フロイスは伴天連追放令によって逆境に立たされます。
ついには、フロイスも囚われの身となってしまいますが……。
史実に基づいた宣教師ルイス・フロイスのエンターテイメント的歴史小説です。
ミュージカル 刀剣乱舞『静かの海のパライソ』(江戸時代)
ミュージカル版の刀剣乱舞は舞台と違い、歌唱が含まれ、2部はライブパートという構成になります。
この物語の舞台は島原・天草一揆です。
歴史修正主義者により、一揆軍の大将である天草四郎が殺されてしまいます。
刀剣男士の鶴丸国永、浦島虎徹、日向正宗は天草四郎の名を引き継ぎ、それぞれが一揆軍を集め、三万七千人の軍隊を作りました。
史実通り、原城での籠城を行いますが……。
幕府軍だけではなく、一揆軍による寺社焼き討ち、虐殺なども歴史に忠実に描かれ、島原・天草一揆をより深く知るミュージカルとなっています。
嶽本野ばら『デウスの棄て児』(江戸時代)
この小説の主役は天草四郎です。
天草四郎は資料があまりなく、その正体や詳細はよく知られていません。
この本の天草四郎は不幸な生い立ちを辿り、デウス(イエス)から棄てられた存在だと自身を認識しています。
ポルトガル生まれで、日本にやってきた時に潜伏キリシタンたちから神の遣いだと崇められ、島原・天草一揆を率いる運命に。
嶽本野ばらの解釈が強い小説ですが、遠藤周作『沈黙』のように信仰や信心について考えさせられる物語です。
帚木蓬生『守教』上・下(安土桃山時代〜江戸時代)
福岡県の「今村信徒」と呼ばれる潜伏キリシタンを中心にした物語です。
安土桃山時代から丹念に歴史の動きと今村信徒の運命が綴られています。
安土桃山時代、キリスト教は戦国の世に生まれた農民たちの心の拠り所となりました。
しかし、禁教の時代に入ると、厳しい迫害が農民たちを襲います。
「命より大切なものがある」と殉教を決めた一人の男を通して綴られる潜伏キリシタンの信仰の物語です。
森禮子『五島崩れ』(明治時代)
自らもクリスチャンである芥川賞作家・森禮子の著した物語です。
潜伏先を探し、五島列島へと渡った潜伏キリシタン。
五島列島で七代を耐え抜いた孫である潜伏キリシタンのミツは、貧しい家で母や兄弟と暮らしていました。
ミツの許嫁の幸吉は、長崎で洗礼を受けて帰る途中、役人に見つかり、ロザリオを海に捨てられてしまいます。
幸吉はそのまま海の中に飛び込み、ロザリオを探すのですが……。
五島列島での熾烈な潜伏キリシタン弾圧を描いた長編小説です。
遠藤周作『女の一生1部 キクの場合』『女の一生2部 サチ子の場合』(明治時代、昭和)
『沈黙』の著者、遠藤周作の別の潜伏キリシタンの物語です。
「キクの場合」の時代は幕末から明治。
長崎の商家へ奉公に行ったキクが恋をした相手は、潜伏キリシタンの清吉でした。
清吉はやがて浦上四番崩れに巻き込まれ、流刑にされてしまいます。
キクは彼を牢から出すお金を捻出するため、身を売るようになり……。
「サチ子の場合」は昭和期の第二次世界大戦へ時代がくだります。
コルベ神父と出会い、キリスト教を学ぶサチ子。
しかしコルベ神父はポーランドに戻るとアウシュビッツ収容所へ収容されます。
サチ子が思いを寄せる修平は特攻隊員として兵役に。
そして長崎には原爆が投下され……。
長崎の激動の時代と、キリシタンとの運命がドラマチックに描かれています。
『のさりの島』(現代)
この作品は京都芸術大学と北白川派と合同で作られた映画です。
オレオレ詐欺で旅をする男が、熊本県天草市にやってきました。
とある老婆・艶子に電話をすると、孫の「将太」と間違えられ、そのまま居候することになります。
そのまま男は将太として街の昔の様子をみんなに知ってもらうという趣旨の上映会の企画に参加することに。
企画をしたラジオパーソナリティの「清ら」は、将太の正体にだんだんと気がついていきます。
この映画では艶子の昔の写真に教会が出てきたり、街の様子として教会や信仰をする人々が出てきます。
潜伏キリシタンが生きた地で、現代ではどのようにキリスト教が息づいているのかよくわかる映画となっています。
2. 潜伏キリシタンは歴史を伝えるだけでなく、著者の思いや考えも代弁する
映画・本・舞台を10選ご紹介しました。
いかがでしょうか。
潜伏キリシタンは様々な創作物のモチーフとなり、歴史的背景を伝えることもあれば、著者の思いや考えを代弁する存在にもなっています。
映画・本・舞台を通して潜伏キリシタンについて理解が深められると幸いです。
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