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どうしてパリの地下に骸骨が?カタコンブ・ド・パリの歴史的背景を紹介

無数のガイコツがひしめく地下納骨堂

カタコンブ・ド・パリ。
華やかなパリの都の地下には数え切れないほど無数のガイコツがひしめいています。

世界最大の地下墓地は地上とはまったくの別世界。
両側の壁を埋め尽くす頭蓋骨たちに見降ろされ、通路を進んだ先は全くの異次元の世界へとつながっています。

カタコンブ・ド・パリとは?パリの地下に骸骨がひしめく理由

石畳の美しい町並みパリの地下に広がる広大な納骨堂カタコンブ・ド・パリ。
約600万体の遺骨が眠るとされる世界でも類を見ない巨大な地下墓地はいったいどのようにして生まれたのでしょうか。

800ヘクタールの巨大地下空間であるカタコンブ・ド・パリは、実はもともと墓地として掘られたわけではありませんでした。パリの石造り建築需要を支える採石場だった場所を墓地として転用したのです

 

カタコンブ・ド・パリが生まれた歴史的背景

まずはカタコンブ・ド・パリの歴史的背景からご説明しましょう。

ローマ時代からの長い歴史を持つパリでは、昔から土葬の習慣がありました。
パリ市民が亡くなると、教会の地下や教会周辺の墓地に土葬されていたのです。

しかし、10世紀になるとパリ教区内に人口が密集し始めたことから、だんだんと墓地の場所が不足するようになりました。住民の数も多かったため、墓地の場所を拡張することすらできずにいました。

12世紀の頭ごろになると教会墓地に入りきらなくなった遺体を埋葬するために、現在のレアル地区に新しく集団埋葬墓地「サン・イノサン墓地」が作られます。

教会区の墓地より安い埋葬費用が設けられたため、教会に高い埋葬料を払えない貧しい人々の遺体が収容されるようになります。

しかし、17世紀になるとサン・イノサン墓地ですらもはや新たな遺体を埋葬する場所がないほどの満員状態になってしまいます。

そんな状況ですが、聖職者達は教会運営のために少しでも埋葬料を取得しなければならず、遺体の埋葬を続けました。

その結果、サン・イノサン墓地周辺はゴミと糞尿、死体の腐敗臭に包まれ、衛生状態が悪化。
疫病によって命を落とす人が増えていきました。

18世紀にはさらに戦争や紛争、ペストなどの疫病が大流行し、ますます多くの人が亡くなりました。サン・イノサン墓地だけでなくパリ中の墓地がこれ以上遺体を埋葬することができない状態に陥ってしまいます。

そして1780年。

ついにおそろしい事件が起こったのです。
サン・イノサン墓地周辺の地下にあったワイン貯蔵庫の壁が、地下に埋葬された遺体のあまりの重さに耐えきれず倒壊してしまったのです。

この事件の以前にも、このワイン貯蔵庫のワインは壁を越えて侵入してくる遺体の腐敗臭によって1週間もしないうちに酸っぱくなり、保管されていた食べ物は腐ったということですので、相当に不衛生だったことが伺えます。

そこで1785年11月、パリ高等院はついにサン・イノサン墓地の閉鎖を決定しました。

地盤沈下と衛生問題を片づける一石二鳥の解決策

ここでパリの美しい街並みを思い出してみてください。
統一された石造りの建物が整然と建ち並んでいました。

パリの建物に使用されている石材は、何世紀にも渡ってパリの地下採石場から切り出されたものです。
このため、街が発展し採石場が拡大するにつれて、地下の空洞が拡大していきました。

やがて採石場の老朽化にともない、地下の壁や柱が崩れ、地盤沈下などの問題が起こるようになっていました。
18世紀後半、政府は長期間放置されていたパリの採石場の状況を調査します。

地盤沈下を引き起こす空っぽのトンネルを見て、彼らは一つのアイデアを思いつきました。
それこそが墓地に埋葬しきれなくなっていた遺体をこの空洞に埋葬してしまおう!というものだったのです。

パリ中に溢れかえっている遺体を処理することができ、地盤沈下を引き起こす採石場跡を埋めることができる。
まさに一石二鳥のアイデアでした。

1786年。
サン・イノサン墓地を始めパリの地下に乱雑に埋葬されていた遺骨を収容し、2年かけて採石場跡に移送しました。

これこそが地下納骨堂、カタコンブ・ド・パリの始まりです。
その後もカタコンブ・ド・パリはフランス革命時代には、無名の囚人からギロチンで処刑された多くの著名人まで数多くの遺骨を納める場所として利用されてきました。

骸骨が並べられている奇妙な光景は人々の関心を引くことになり、地下納骨堂が造られてすぐの1806年には一握りの特権階級の貴族たちのための公共の観光ツアーが開催されるほどでした。

実はカタコンブ・ド・パリの見学ルートに電気が引かれたのはつい最近の1983年。
それまでは火を灯したろうそくを手に見学していたそうですから、今よりももっとおどろおどろしい雰囲気でスリル満点だったことでしょう。

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