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世阿弥と能について知ろう

【PART.4】能の鑑賞の仕方



世阿弥と能について知ろう」シリーズでは、能という舞台芸術の創始者である世阿弥に焦点を当て、世阿弥の著作の中から現代でも生かせる言葉や、世阿弥の生涯、能の歴史、能の鑑賞、世阿弥と能に関する本についてご紹介します。

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この記事では、能の鑑賞の仕方についてご紹介します。 能が物語によって演じられる順番が決まっていることや、特殊な能の舞台の形状、能を事前に予習する方法と、初心者におすすめの演目がわかります。

1. 能の鑑賞の仕方について知ろう

これまでの記事で、世阿弥と能についてご紹介しました。

今回は、能の鑑賞の仕方をご案内します。

能にはたくさんの物語があり、演じられる舞台も特殊な形をしています。 鑑賞する前に物語や舞台を知っておくと、もっと楽しく観ることができます。

2. 能の鑑賞

2-1. 能の番組

能には、番組というものがあります。 番組とは、場内で配られる小冊子のことで、上演時間や役者の名前など、パンフレットの役割を果たしています。

役者の情報の項目は、位置でシテやワキを表す少し独特な読み方をしますので、図で解説します。


①シテ
②ツレ(シテの助演役)
③ワキ
④ワキツレ(ワキの助演役)
⑤アイ(間狂言)
⑥笛
⑦小鼓
⑧大鼓
⑨太鼓
⑩主後見(舞台の手伝い・非常時のシテ代役)
⑪副後見(舞台の手伝い)
⑫地謡(謡。ナレーションの役割)
⑬小書(能の特殊な演出)

以上は観世流の書き方となり、流派によって多少の違いがあります。

2-2. 能の演目 五番立(ごばんだて)

能の正式な演目の一つに、五番立というものがあります。

能の内容によって、演じられる番組が決まっているのです。 五番立は能を5つ演じ、間に狂言が1つ含まれます。

いつの時代から五番立が使われるようになったのかは不明ですが、江戸時代には謡本の流通で広まっていたと言われています。

能はこの五つの種類に当てはまるため、現在もよく使われます。 五番立は一日をかけた非常に長い舞台となるため、現在では能二、三番に狂言が1つ含まれる演目となる場合が多いです。

●初番目物

神が登場する物語。
脇能物(わきのうもの)とも呼ばれます。

主な能…
『養老』老体に活力のつく「養老の滝」を見つける物語。
『高砂』僧が松の精に誘われて、住吉明神と出会い、舞を見る。

●二番目物

『平家物語』の登場人物が現れる物語。
修羅物(しゅらもの)とも呼ばれます。

主な能…
『敦盛』平敦盛が化身となり、回向を求める。
『清経』夢幻能。清経の霊が妻の元を訪れる。

●三番目物

優雅な舞を中心にした物語で、女性がシテになる場合が多い。
鬘物(かづらもの)とも呼ばれます。

主な能…
『松風』在原行平に恋焦がれた姉妹の霊が狂おしく舞う。
『井筒』在原業平と恋仲だった紀有常の娘の霊が、彼の服を着て舞う。

●四番目物

一、二、三、五のどれにも当てはまらない能がここに入ります。
雑物(ざつもの)、狂物(くるいもの)とも呼ばれます。

主な能…
『砧(きぬた)』帰ってこない夫を思って死んだ女の霊が、夫の読経によって救われる。
『花筐(はながたみ)』狂女が継体天皇と和解し結ばれる。

 

●五番目物

人間以外の異形のものがシテになった物語。
切能物(きりのうもの)とも呼ばれます。

主な能…
『鵺(ぬえ)』鵺の亡霊が夜な夜な淀川に現れ、回向を求めながら舟で流れていく。
『融(とおる)』月の都の者となった源融(みなもとのとおる)とその大臣(おとど)の霊が僧と出会い、一瞬の風雅を舞う。

2-3. 能の舞台

厳島神社 能舞台


能を公演する舞台のことを能楽堂(のうがくどう)といいます。

元々は野外にあったもので、現在では屋内に見所(観客席)と能楽堂が設けられている方が多いです。

舞台上は大きく分けて
①本舞台 (能が演じられる中心部分)
②地謡座 (謡が斉唱される場所)
③後座  (笛・小鼓・大鼓・太鼓の順に座る)
④橋掛り (役者が出てくる通路。ここでも演技が行われる)
に構成されます。

見所は
正面 (本舞台前)
中正面 (本舞台の斜め方向)
脇正面 (本舞台の真横)
に分けられます。

初めて鑑賞する場合は正面か脇正面がわかりやすく、見やすい席でしょう。 なお、普通の舞台でも能を演じることが可能です。 必要な場合は特設ステージをつけて公演されます。

2-4. 初心者におすすめ 世阿弥作の能3選


能は主に古い言葉が使われており、またシテは面をつけているため、台詞や謡がかなり聞き取りづらい場合が多いです。

そのため、深く作品に入り込みたい場合は、事前に本やインターネットなどで台詞を調べた上で、鑑賞した方が良いでしょう。

しかし、能の台詞と謡は優雅さを演出する一つでもあるので、少しの情報だけを取り入れ、舞や上演の流れに注目するのも鑑賞方法です。

初心者の方は、おすすめの能演目から、気になる作品を選んで鑑賞すると、わかりやすくなります。

初心者におすすめ 世阿弥作の能演目3選

『高砂』
・現代でも結婚式で謡が読まれることもあり、親しみがある作品。
・夫婦や、神に例えられる松がシテになっている。
・幸福の祈りが込められた清らかな謡と舞を味わえる。

『井筒』
・世阿弥が自分自身で「最高傑作」と称する作品である。
・世阿弥が作った「夢幻能」のひとつ。
・すすきの生えた井戸の傍で、在原業平の服を着た女の、静かに舞う姿が哀愁を漂わせる。

『鵺』
・異形の妖怪「鵺」がシテである。
・『平家物語』の「鵺」が原典にあたる。
・助かりたいと願いながら、叶わず、川底へ沈む鵺の姿が物悲しい。

3. 能を鑑賞してみよう

能の鑑賞について、少しでも多くのことがお分かりになったでしょうか。

能には番組という独特なプログラムがあり、シテやワキが位置で表現されています。

正式な五番立という演目があり、能を五種類に大きく分けられるため、便利なものとして使用されてきました。

能楽堂という特殊な舞台の形状も、能を鑑賞する上で欠かせない知識です。 内容や舞台など、鑑賞の予習が必要な能ですが、あまり知識を詰め込みすぎず、優雅な舞や音楽を楽しむこともできます。

初心者の方であれば、おすすめの演目を試しに鑑賞してみるとよいでしょう。 ぜひ、能を鑑賞して頂けたら幸いです。

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